Favorite Banana Indians

Mail

Singularity Crash
~〈わたし〉に続く果てしない物語(ストーリー)~

Singularity Crash~〈わたし〉に続く果てしない物語ストーリー~

Singularity Crash~〈わたし〉に続く果てしない物語ストーリー~


2016年12月16日〜18日 ワーサルシアター八幡山

【作・演出】

息吹肇

【CAST】

  • 松原夏海(ワンダー・プロダクション)
  • 椎名恭子(アミティープロモーション)
  • 水沢レイン
  • 綾部りさ
  • 山田貴之
  • 川島千明
  • 小原慎之介(アイトゥーオフィス)
  • 相神一美
  • 近藤眞弘
  • 森崎真帆
  • 埴生雅人
  • 長紀榮
  • 長谷川彩子
  • 前田優(A-LIGHT)
  • 加藤美帆
  • 坂元瑛美
  • ありすちゃん
  • 田島隆行(シーグリーン)
  • 小谷陽子(製作委員会)
  • 大越陽(シーグリーン)
DVD販売中

あらすじ

2050年。人工知能の能力がついに人間のそれを超えて5年あまり。人工知能を搭載したアンドロイドが社会の実権を握り、人間の脳とマイクロチップを融合させた「新しい脳」を持つ「セミ-アンドロイド」が作り出された。純粋な人間は改造されてセミ-アンドロイドになるか、一生人工知能の補助的な役割を担うかの選択を迫られる。そして、アンドロイドが支配する世界政府は、セミ-アンドロイドを含めた全ての「脳」を直接ネットワークに接続する「グローバル・ブレイン」を構築した。
「グローバル・ブレイン」に接続されたセミ-アンドロイドのヨーコは、ネットワーク内で「嘆き」の信号をキャッチする。その発信源と思われる1人の人間の女・月渚を、彼女は同じセミ-アンドロイドで恋人のタケシや仲間と共に探し出そうとする。しかし、月渚の脳内の人格と記憶のデータはネットワークを通してヨーコに「移植」され、ヨーコ達はアンドロイドのサイバー特別警察に追われる身になってしまう。月渚の「記憶」の世界では、彼女は2016年の高校の演劇部の部長で、部員達と一緒に「〈わたし〉に続く果てしない物語(ストーリー)」という芝居を作っていた。その内容はヨーコ達が生きている時代をそのまま描いていた。この芝居は「予言」なのか?その中に含まれている最重要の「機密情報」とは?そしてヨーコ達の運命は? 

江島志穂
春田奨
長谷川彩子
高安有紀

コメント

Favorite Banana Indiansの本公演は、2012年9月以降行われていなかった。僕の個人的な事情と、コラボ企画が重なったためである。しかし、やはり劇場での本公演を行いたいという気持ちはずっと持ち続けていた。それを実現すべく、2016年の1月から企画をし、劇場を押さえ、スタッフさんを確保するなど、着々と準備を進めていた。
本来僕は派手目の芝居が好きである。活動再開後はライブハウスでの公演が続き、なかなかやりたいことができなかった。その鬱憤を晴らすべく、ダンス・殺陣・歌・映像と、入れたいものを全て入れた作品になった。人工知能の流行で、その手の作品は巷に氾濫していたが、多分こういう描き方をしたものは少ないだろうという作品にしたいという思いも強く、大学卒業直後に考えていた案を、今の時代の要素を入れて形にした。

キャスト20人というのは、FBI始まって以来の規模であったが、これは企画当初から考えていたことである。人の紹介や、これまで出演してくれた役者、およびその人の紹介もあったが、それでは足りないので、何回かオーディションを行った。作品の性格もあったが、これまでに比べてかなり若い座組になった。一番若いもりまちゃん(森崎真帆さん)は19歳であった。当初予定していた人が辞退したりもしたが、逆に偶然な出会いも多かった。

この公演で特筆すべきは、何といっても元AKB48の松原夏海さんが出演して下さったことである。これは、たまたまTwitterで知り合った方とお話をする中で、その方が関わっている事務所さんに所属している松原さんを主演にして上演したいということになり、コンタクトを取っていただいたことで実現したものである。小劇場というと、どうしても知り合いの中で人材を回す傾向にあり、そのことがお客様も関係者が大部分という閉塞状況を生み出している。その問題意識に立ち、普段は小劇場に足を運ばない方にも見ていただきたいという思いがあった。加えて、松原さんは舞台経験も多く、その力を存分に発揮していただければ、必ずや今までのFBIの舞台とは違った次元の作品になると確信していた。オファーしてから2回脚本を事務所さんに送り、社長さんや松原さんご本人と脚本についてお話しする機会も持てた。その甲斐あって、稽古開始直前ではあったが、出演を決めていただいた。これは本当に画期的なことであった。
事務所さんに送るために、かなり早くから脚本を書いたことで、スタッフさんとの事前の打ち合わせを前倒しできたり、役者に出演のオファーをする時に読んでもらうことができたりと、プラスの効果があった。

実際に稽古に入ってみると、大人数のためなかなか全員揃っての稽古ができずに、苦労することも多かった。この芝居は、大きくわけて「セミ-アンドロイド」チーム、「人間」チーム、「アンドロイド」チームの3つがあったが、「セミ-アンドロイド」チームがなかなか揃わなかった。逆に、「人間」チームの中の「高校生組」は結構全員揃うことが多く、比較的早く固めることができた。「高校生組」はチームワークが特に良く、自分達のシーンの稽古がないときは、別の場所で自主的に稽古したり、稽古前に集まってミーティングしたりと、芝居を自分達で改善していこうという姿勢が強かった。「高校生組」は、どちらかというと雰囲気を和ませる賑やかしのシーンが多かったので、笑いも含めて、そこを意識した稽古が中心になった。「アンドロイド」チームの主要部分を占める「サイバー特別警察」3人も、途中合流の人がいたりして揃わないことが多かったが、演技では息の合ったところを見せていた。「高校生組」はきょうちゃん(椎名さん)が、「サイバー特別警察」ではZENさん(前田さん)が「お姉さん」のような役回りでリードしていた。勿論、「セミ-アンドロイド」チームや他の人達も、揃ったときにはよく話し合って、シーンをより良くするために最後の最後まで頑張っていた。途中、セミ-アンドロイド役のポンちゃん(綾部さん)が体調を崩して入院するということもあったが、ちゃんと戻ってきて、その後は問題なく稽古を進めることができた。
今回は、久々にセットを組むということもあり、転換や段差に慣れておいた方がいいということで、本番3日前から都内のスタジオを借りて、セットを仮組みして稽古した。これもFBIとしては初めてのことであった。結果として、場当たりの時間短縮に繋がったのでよかったと思う。(その代わり経費がかかったが。)

また、殺陣とダンスは、基本的にはシーンの稽古とは切り離して行った。
殺陣は、2007年の「Mirage Hotel ver.2007」以来の無銘鍛冶さんにお願いした。その時と同様、獲物は刀ではなく、ライトセーバーを使った。殺陣の経験がない人も混じっていたので、まずは無銘鍛冶さんの通常稽古に参加して基礎から教えてもらうことにした。お陰で殺陣に絡むキャストは、怪我もなく迫力ある殺陣ができるまでにスキルを上げた。例えば、お客様には、サイバー特別警察の加藤さんが今回殺陣が初めてだったとは分からなかったと思う。
ダンスの振付は、ダンス公演「ツルノヒトコエ」を共同主催しているAYANEさんにお願いした。今回もPerfumeのダンスを取り入れたが、完コピとAYANEさんオリジナルが違和感なく融合した、カッコ良い振りになった。ダンス未経験者もいたので、AYANEさんも苦労したと思うが、さすがプロフェッショナルと思わせる凄いダンスを作っていただいた。オープニングでお客様に強烈な印象を刻みつけたダンスができたのも、AYANEさんの振付と厳しい指導があり、それにキャストが食らいついていったからである。
殺陣もダンスも、芝居のお飾りにはしたくなかった。それだけとっても完成度が高いと思わせなくてはならないと思っていたが、その通りの評価が得られたので、本当に感謝している。
やはり久し振りに取り入れた映像は、Facebookで知り合った谷さんにお願いした。SFの特殊な世界観を表現するのに映像がどうしても必要だと思っていたが、こちらも狙い通りの効果を発揮した。
FBIの芝居の特色の1つである劇中歌は、今回は全てこの作品のために書き下ろされたものである。以前から役者・声優として知っていた仲村さんにお願いしたが、CDを希望するお客様がいた位のクオリティであった。アレンジもかなり凝っていて、本番直前まで音を手直しして下さった。ただ、音域が広く、役者が歌いこなすのは結構難しかった。歌唱指導を、番外公演vol.5に続いてLynksの山本さんにお願いしたが、もっと歌の練習にも時間が取れたらよかったと思う。
上記の殺陣、ダンス、歌の全てに関わった主演の松原さんは本当に大変だったと思うが、存分に魅力を発揮してくれた。
そして、やはり劇場の照明、音響は、作品世界をより効果的に見せてくれた。土屋さんの音響の選曲のはまり具合は色々な人から評価されたし、初めてお願いした西重さんの照明は、まさに僕のイメージ通りの派手さで、特殊な世界観を表現するとともに、歌やダンスのシーンでは華やかさを演出していた。ムービングを使用したのは今回が初めてだったが、とても効果的だったと思う。
セットらしいセットを組んだのは、おそらく2016年の「MIRAGE HOTEL」以来だと思うが、狭い空間で映像の投影もあるという制約がありながら、舞台美術の眞野さんは作品世界にマッチしたセットを作って下さった。ただ、セットの裏は狭く、楽屋と繋げられなかったため、「飼い殺し」状態になったキャストには相当なストレスだっただろう。

キャストはみんな本当に好演で、役に合った個性的な演技が光った。それぞれが稽古場で多くの課題を抱えていたが、全員が本番に合わせてきた。
主演のヨーコ役の松原さんはさすがの存在感で、華があった。ダンスも飛び抜けてうまく、舞台初主演とは思えない安定感を見せ、座長としての役割を十二分に果たした。照明の下で演技する彼女を見て、やはり舞台で輝く人なんだなとあらためて思った。途中から他の人格が乗り移るという難しい役どころだったが、これを見事に演じた。稽古場でも積極的に意見を出す真摯な姿勢が本番に結実したといえる。役柄と相まって、彼女のスター性が存分に生かされた舞台になったと自負している。カーテンコールで出演者にコメントを求めるスタイルはこれまでのFBIにはなかったが、これは彼女のアイディアである。2日目のソワレから、15分前の前説をありすちゃんにやってもらうことになったのも同様である。これが客席をいい感じに暖める効果を発揮した。そのことも含めて、僕の舞台に商業の風を吹き込んでもらえたのは、本当に大きな収穫だった。
1人ひとりが本当に好演で、全員について触れているとどれだけ長く書いても足りない位だが、サイバー特別警察の3人の人気が高かったことは大きかった。さりーさんの衣装がカッコよかったこともあるが、全員の雰囲気がクールだったことも大きい。中でも加藤さんの人気は高かった。そして、今回が2本目とは思えない舞台度胸を発揮したもりまちゃんも注目に値する。ほんわかした雰囲気が可愛く、制作さんが彼女を推すと言っていた位である。ダンスも上手く、彼女と坂元さんは、2017年2月の「ツルノヒトコエ」公演に出演することになった。また、ポンちゃんはその色っぽさで大いに注目され、その確かな演技力とも相まって、人気を博した。
ヨーコと対になる月渚役のきょうちゃんは、「True Love」に続いて重要な役どころだったが、制服姿も可愛らしく、非常に印象的な存在感を発揮し、「悲劇が似合う女優」という地位を確立した。勿論、男優陣もみな熱演だった。ヨーコの恋人・タケシ役のレインさんは、男気のある演技とは裏腹に、毎回稽古場を爆笑の渦に陥れていた。
なお、アンドロイドのアイドル・ミカ役のありすちゃんは、元バクステ外神田1丁目のメンバーである。短いながら彼女と松原さんの2人のシーンがあったので、双方のファンにとっては見応えがあったのではないだろうか。

そして、初の試みとして、制作費の一部を「クラウドファンディング」という手法で募った。当初はプロジェクト成立が危ぶまれたが、松原さんの参加とともに援助して下さる方も増え、期間内に超過達成をすることができた。本当に有り難いことである。劇場に足を運べない方も含めて、多くの人に支えられて公演を行っているという手応えを実感できた。初めての経験で、とても意義深かったと思う。
また、これもFBI初となる物販を行った。キャストの写真セットがほぼ売り切れたのは予想通りだったが、脚本が売り切れたのは予想外だった。後日でも欲しいといって代金を支払って下さった方までいたほどである。次回からも脚本の販売を行おうと考えている。
劇場のエントランスにスタンドの花が並んだのも初めてで、華やかな雰囲気になった。
公演特設サイトと専用Twitterアカウントを使った情報発信も初めて行ったが、これも非常に効果的であった。

お客様にも大変好評をいただいた。驚くべきは、本番3週間前に全公演のチケットが売り切れ、キャンセル待ちも出たことである。3日間6ステ(うち1回は公開ゲネ)だったとはいえ、小劇場では珍しいことで、勿論FBIとしても初めてのことである。当然だが、動員数は過去最高だった。2回、3回、それ以上通って下さるお客様もいて、本当に嬉しい限りであった。
内容は少し難しいという声も聞いたが、思っていたほど見ている人が置いていかれることもなく、上演時間2時間10分という長さながら、あっという間に過ぎたというご意見が大半だった。唯一の心残りは、大楽にDVD撮影が入ったが、その回に限って全員台詞を噛みまくり、ありすちゃんが歌詞を間違えたことくらいであろうか。

千穐楽のカーテンコールで、松原さんが「この作品は、全員が主役だ」と言っていた通り、誰が欠けても成立せず、誰もが自分の役を精一杯演じきった。作っていく過程では色々問題もあったが、結果的には最高の座組であったと思う。勿論、スタッフさんも最強だった。この人達と出会えたことに感謝したい。
この舞台が頂点ではなく、新たなステージへの出発点になるのだと確信している。この公演でFBIは漸く最終的に目指す場所へのスタートラインに立った。ここからが正念場であり、本当の勝負である。ここまで来られたこと自体、本当に幸福で、第8回本公演からの流れを考えると、感慨深いものがある。
この芝居に携わった全員と、応援して下さったたくさんの方の力が結集されて、第9回本公演は、生涯決して忘れられない素晴らしい公演となった。

プロモーション動画