Favorite Banana Indians

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Favorite Banana Indians×myria☆☆
「True Love~愛玩人形のうた~」
(番外公演vol.7)

2015年11月14日(土)
渋谷aube


【作・演出】息吹肇

【楽曲・演奏】

【CAST】

  • 椎名恭子(アミティープロモーション)
  • 西村守正
  • 古都絢(プロダクション薫風)
  • 松下高士(アミティープロモーション)
  • 桔川結有(アミティープロモーション)
  • 小谷陽子(製作委員会)
  • 豆鞘俊平(アミティープロモーション)
  • 土岐菜和子(アミティープロモーション)
  • 大森さつき(アミティープロモーション)
  • 真白麻菜(アミティープロモーション)
  • あべそういち(声)
DVD販売中

あらすじ

アンドロイド開発の第一人者・鮎川哲郎博士は、人間の女の姿をしたアンドロイドのiを作り出す。
iは、所有者を「愛する」ことで、所有者を攻撃してくる敵から守る護身用として作られた。また、iは自身が抱いた「感情」を歌にしてメモリーに記憶する機能も備えていた。
iの抱く人間よりも純粋な愛情を求め、鮎川は次第にiに溺れていく。
そして事態は、鮎川のみならず、鮎川の周囲の人間をも巻き込んで、思わぬ方向へと展開していく…

コメント

「True Love」は、2012年9月の第8回公演で上演されていたのだが、この時は諸事情があって僕が途中で演出を降板し、その影響もあって僕の意図したものができなかった。何とかリベンジしたかったのだが、2014年6月に演劇ユニットmilkyさんによって音楽劇として上演され、これが好評だった。ここで自分でもやっておこうと思い、企画した公演である。
そもそもこの脚本は、myria☆☆さんとのライブハウスでのコラボレーション公演のために書かれた。それを改めて実現させようと、前年の秋にmyria☆☆の遥川ひまりさんに話をしたところ、快諾してくださったので、そこからプロジェクトがスタートした。会場は幾つか候補があったが、Lynksさんとのコラボ「Glare」で使用するaubeが、広さ的にも良さそうということで決まった。同じ年に同じ場所で連続して公演を行ったのは、FBIになってからは初めてである。

 キャストは、知り合いとオーディション組の2つに分かれた。
陽子さんは当然のように(?)続投だったが、彼女以外で最初に声をかけたのは、いちさんこと古都さん。この年の2月に知り合いの舞台に出ていたのを見てオファーした。また、陽子さんのお気に入りの(?)役者である西村さんも早くに決まった。西村さんは、この作品を最初からとても気に入ってくれていて、かなり気合が入っていた。
他の3つのメインキャストについては、適当な人が周りにいなかったため、かなり久し振りにオーディションを行った。CoRichに募集を出していたのだが、これを目に留めたのがアミティープロモーションのTマネージャーだった。Tさんは、事務所内でオーディションを受ける人を募り、候補者のプロフィールを送ってきてくれた。ここにいたのが、松下君(たかし君)、椎名さん(きょうちゃん)、桔川さん(ゆうさん)だった。たかし君は、オーディションでカホンの演奏を披露してくれた(役とは全く関係ないが)。
主役のiに決まったと知った時、きょうちゃんは夜中だというのに、ベッドの上で小躍りしたそうである。
(西村さん、きょうちゃん、ゆうさんは、本編に先立って、9月の「True Love-episode 0-」に出演した。)

 ところがこれでは終わらなかった。Tさんは、「他にも役者がいるので、使ってもらえないでしょうか」と猛プッシュしてきた。それで、所謂アンサンブルキャストとして、豆鞘君、土岐さん、大森さん、真白さんの出演が決まった。Tさんは、「音楽劇のアンサンブル」と聞いて、ダンスや歌があると勘違いしたらしい。オーディションでは、みんな歌やダンスをしてくれたりした(何故か豆鞘君はしなかった)。ほぼワンシーンしかない役の全てに役者がつくというのは、商業演劇でもない限り、なかなかないだろう。

 稽古期間は芝居の尺の割に結構な長さがあったが、役者同士の予定がすれ違って、なかなか稽古ができないシーンもあった。特に、アミティー組のうち、きょうちゃんとゆうさんは、本番直前の2週間に、他の舞台の稽古と本番が重なって稽古に全く来られなかった。そのこともあり、iと哲郎のシーンの稽古回数が極端に少なくなり、役者も僕もかなり苦労した。ただ、その分できるシーンを何度も稽古することができ、脚本に対しての理解を深めたり、新しい方向性を試したりできた。これは大きな収穫だった。
アミティー組の中でも、舞台経験の多いたかし君は、稽古中も色々なアイディアを出してくれたし、こちらの指示の飲み込みも早く、かなり助かった。iと愛理の2人のシーンは、かなりディスカッションをして作り込んだ。愛理役のゆうさんは、役に支配されやすく、稽古場で次第に精神的に病んでいったらしい。その甲斐あって(?)、i、翔太、愛理が絡む後半部分は、結構作り込めたと思う。
哲郎役の西村さんは、i役のきょうちゃんとの関係性を出すのに苦労したが、一方で美智子役のいちさんとは、初共演ながら演技をしていて通じ合うものがあるとしきりに言っていた。
アンサンブルの人達は、決められた日にだけ来て稽古するという形だったが、4人いる記者役にそれぞれキャラクターをつける等、少ない出番を如何に面白く見せるかを工夫した。みんな他に出ればたくさん台詞がある役につく人達なので、ある意味とても贅沢なシーンになったと思う。

 iのきょうちゃんのみ、アンドロイドの特別な衣装があった。とあるアニメキャラのコスチュームを、2月に続いてお願いしたさりーさんが改造した。ひまりさんもベースは同じコスチュームを着たが、2人の背格好が同じ位だったため、iの歌をひまりさんが歌うという構図がよく見える結果になった。さりーさん制作のiの攻撃装置は、その存在感の大きさから「ガンキャノン」と命名された。

 また、終盤の哲郎と翔太の格闘シーンのためのアクション指導を、ELEGY KING STOREさんの「羅城の蜘蛛」の出演者である仲村水希君にお願いした。大事なシーンなので、動きにはこだわりたかったのである。「羅城の蜘蛛」の出演者といえば、裁判長役の声は、今やすっかり声優になってしまったあべ君にお願いすることになった。2人とも、Facebookで再会したことで再び繋がれたのである。

 myria☆☆さんとの合わせの稽古は2回行った。曲は「episode 0」と共通のものとあと1曲だったが、その中でもラストの「Rebirth」は、芝居のシーンに合わせてアレンジが変えられ、前半部分がアコースティックになった。キャストが多かったため、全員がスタジオに入ると満杯になり、アンサンブルの人達は出番が終わると廊下に出ていなければならなかった。
ひまりさんは稽古場にも来てくれた。ただ見学しただけではなく、myria☆☆のサイトにアップするための独自のインタビュー映像も収録した。この時はきょうちゃんが休みだったので、彼女の映像は後から別撮りで挿入された。

 稽古は、紆余曲折ありながらも概ね順調だったが、この時期、主要な稽古場として使っていた公共施設に暖房が入らず(故障ではなく、施設としての「方針」だったようである)みんな寒さに凍えながら稽古をしていた。僕も含めて、まんまと風邪をひいてしまった役者もいた。

 本番当日のタイムテーブルは、6月の「Glare」と全く同じだった。しかも、尺は今回の方が20分位長かったため、かなりドタバタになった。「Glare」よりも芝居的な動きの要素が多いため、きっかけも多かったが、場当たりをかなりのスピードでやったため、細かく確認する時間がとれない部分もあったのは事実である。また、作品の性質上、役者を出はけさせる必要があったため、廊下に通じるドアを開閉して対処した。このため、少し芝居のリズムが悪くなった感は否めない。ライブハウスの性質上、ステージと楽屋は完全に遮断さえているという難しさがあったが、それでも最後まで大きな事故はなくやり遂げることができた。全員の対応力の高さがあったからだろう。

 役者は、今回も全員が好演。西村さんの哲郎は威厳があり、どこまでもリアリティを追求した演技が印象的だった。いちさんの美智子は細やかな感情表現がよかった。彼女も、今までの美智子役同様長ぜりに苦しんだが、さすがの仕上がりであった。きょうちゃんのiは、彼女の持ち味である純粋さと可愛らしさが生き、主演としての役割を見事に果たした。僕の知り合いは、きょうちゃんの声に惚れたようである。たかし君の翔太は、過去2回の上演と比べて最も役のイメージに近い「クズ男」ぶりを表現。愛理との素っ気ない会話やすれ違い、それと対照的なiとの親密さ等、ひまりさんも絶賛する見事という他ない演技であった。
初演、再演時と最も印象が変わったのが、ゆうさんの演じた愛理だった。これまではどちらかというと可愛い女性という方向性で、そういうタイプの役者が演じていたが、ゆうさんはかなり大人っぽく、フェミニンな感じで演じた。僕の中にもなかったイメージだったが、結果的に、彼女独自の愛理役を作り上げた。milkyさんで愛理を演じたこはるちゃんが見に来て、「私にない色気があった」という感想を述べた。愛理という役に対して新しい発見ができたのは、彼女の力である。中盤にある、美智子と愛理の遣り取りに、密かな「女の戦い」の色が加わったのは、彼女の愛理の造形に依るところが大きい。

 お客様にもかなり好評だった。僕のmixiの知り合いは、「最初から最後まで一度も眠くならなかった」という感想を書いてくれたし、本当に思い白い時しか褒めないというひまりさんのお知り合いのプロデューサーさんにも好評だったと聞いた。myria☆☆さんの楽曲の雰囲気と、芝居が合っていたという感想をたくさんいただいたことは嬉しかった。「Glare」の反省を生かし、演奏と曲を絡めるシーンを作ったことが奏功した面もある。芝居とバンド演奏のコラボに関しても、斬新さを感じてもらえて概ね受け入れられたが、フルコーラスの演奏はやや長いという意見もあった。芝居と演奏のどちらをメインと見るかという問題にも繋がるが、これも今後も課題の一つである。
また、今回やってみて、これはライブハウスよりも、劇場で上演する方が合う脚本だということも分かった。生演奏の魅力は捨てがたいが、より効果的に見せるにはライブハウスでは限界があることも事実で、その意味では非常に難しい脚本だともいえる。

 色々な問題はあったが、やはり大成功といっていい公演であった。過去2回の上演があったからこそという面もあるので、再演ということの意義にも気付かされた。役者がスキルと意識の高い人達ばかりだったことも大きな理由であろう。
そして、最初にコラボを考えた時にはなかったmyria☆☆さんの楽曲があったことも当然大きい。ひまりさんからも色々なご意見をいただき、それでオープニングに過去2回にはなかったiの台詞が入った。そもそもこの作品は、myria☆☆さんの「Machine –Android №9-」という曲がなかったら生まれなかった。ある意味、ひまりさんとの「合作」ともいえる。
様々なことを考えても、今、このタイミングだからこそできたステージだった。「True Love」は間違いなく僕の代表作であり、またこれまでの上演の中では最も完成度の高いものを作ることができたと自負している。色々な意味で、忘れることのできない公演となった。

 なお、きょうちゃんは、この芝居のキスシーンの稽古中に、正真正銘の「ファーストキス」をした。女優・椎名恭子を象徴するエピソードとして、この先長く語り継がれるであろう。彼女にとっても、記念すべき公演となった。

 そして、今回も、恒例のツルギさんによる役者紹介PVを制作した。稽古開始直後の収録とあってまだ雰囲気が固かったが、その中で、まだ病む前のゆうさんが、1人テンションを上げて場を盛り上げようとする健気な姿が印象的であった。

プロモーションビデオ